「娘の出産祝いに、何か特別なものを贈りたい」。神戸市在住の田中さん(65歳)がご相談に来られたのは、昨年の初秋のことでした。

田中さんのお母様(故人)が愛用されていた正絹の訪問着。丁寧に保管されてはいましたが、田中さん自身が着る機会はなく、長らくタンスに眠っていたそうです。

「捨てるのは絶対に嫌だけど、自分が着ることもないし…と思っていたら、ちょうど娘のお産が近くなり、お祝いに何かできないかと思ったんです」

個性を活かしたデザイン



お預かりしたお着物は薄くて丈夫なシルクが特徴。その特性を活かし、裏地にオーガニックコットンを合わせたベビードレスをご提案しました。

着物の柄――細かい絣模様が、ドレスの胸元と裾に美しく配置されるよう、柄の出方を計算してパターンを設計。生地の無駄を最小限に、かつ最も美しい部分が目立つよう、一針一針仕上げました。

「ストーリーカード」で想いを添えて



完成したドレスには、元の着物の来歴を記したストーリーカードを同封しました。

「これはひいおばあちゃんが大切にしていた着物のドレスです」──その一枚のカードが、布のドレスを「家族の宝物」に変えます。

田中さんからは後日、「娘も義理の息子さんも、開けてとても感激していた」とご連絡をいただきました。